近くて遠い古墳
やっとこの古墳を見ることができた。
いや、見たことはあったのだけど、いつも通りすがりの車の中からだったのだ。
車通りの多い甲州街道を走る車の中から「ここらへんだぞ、ここらへんだぞ」をとよーく見ていると、一瞬、復元された石積みの古墳が見えるのだ。なので「一瞬」であれば、何度か見たことがある。
場所は東京都府中市。このあたり、小田急線沿線に住んでいる私からすると、なかなか行きにくいところで、車で行くにもちょっと遠い、近くて遠い古墳なのであった。
古墳であるけれども、これは新墳なのではないかという問題
しかし、本日、たまたま近くで用事があって、少し時間もあったので、ついにこの古墳を間近で見ることができたのだ。
間近で見る府中熊野神社古墳は、正直に言うと、ちょっと立派すぎた。
きれいに復元されているので、全然くたびれてない。そりゃあたりまえなのだが、古墳というのは長い年月でちょっとくたびれた哀愁と、長い年月そこにあるという迫力があってこそ、古墳なのではないか、という気がする。
そこいくと、このこの古墳は「ジャジャーン!」と立派にしかもピカピカにそこにあったのであった。
いつもの古墳を見る気持ちよりは、どちらかというと実寸のガンダム像を見た時の気持ちのような感じがした。
これはもはや「新墳」なのではないか、とちょっと思ったのを正直に告白してしまう。
石室展示室にはコロナの波
古墳のすぐ目の前には、というか古墳を背負うように名前の通り熊野神社が建っている。
その参道の脇に「古墳展示館」というのが建っていた。
どんな展示なのだろう、と近づいていくと入り口の自動度ドアには「石室展示室の見学中止について」と赤字の張り紙がしてあって「新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐため、石室展示室の見学を、当面の間中止させていただきました。」とのことである。
ここにもコロナの波が来ているのであった。
しかし、中に入ってみると、ここの展示室は「古墳の発掘・出土品についての展示室」と「石室復元展示室」の二棟に分かれていて、その「石室復元展示室」の方が見学中止なのであって、「発掘・出土品についての展示室」は見学できるようになっていた。
かくれんぼ古墳
この展示を見てみると、発掘前の古墳は木に覆われた小山のようで、事実、さっきウィキペディアを見たら、2003年に発掘するまで、「古墳であるという説」があるくらいで確証はなかったようだ。
てことはこの古墳、1350年くらい前に作られたそうだから、1330年くらいかけてじっくり哀愁を漂わせ、とうとう普通の小山かと思われるほどに身をやつしていたのに、ある日突然
「お前古墳じゃん!しかも上円下方墳じゃん!」
と気づかれて、あっという間に元の姿に戻されちゃったという事のようなのであった。
そう考えると、なかなかかわいい古墳のようにも思えてきた。
そして、展示を見ていて驚いたのは、この古墳を復元するにあたり、もともとの古墳の状態を壊さないように、もともとの古墳の外側にうすーくカバーをするように土を盛り、石を貼って元々の姿に戻したそうで、つまりこのカバーの内側に、本来の古墳は今も埋まっているわけである。
遺跡の保存と復元を担当した方たちに頭が下がる思いである。
そして、それを知ると、元々の古墳が新品古墳の内側でかくれんぼをしているようでもあり、なんだかまたかわいい古墳のように思えてくるのだ。
そうしてなんだか嬉しくなって展示室を後にした。
ちょっと謎
さて、そうして今度は神社にお参りし、その裏手の古墳をまた見物したのであるけれども、ここで一つ、疑問が生じたのだ。
この神社、さっきも書いたようにすぐ後ろで古墳を背負うように建っているのだけれど、古墳の正面のラインと神社の背中のラインが並行ではないのだ。
丁度、石室の入口のところを真ん中に神社が建っているのだから、石室をまっすぐ背負うように建っていてもよさそうな気がするのだけど、そこに三角の隙間があるのだ。
もしかしたら、元の古墳が崩れすぎていて直線が見えなくなっていて、昔なんとなくあったラインに沿って社殿を建てたのかな。
そう思って、帰ってきたのだけど、今、地図で見てみると、町割りと参道は並行なので、町割りと平行に作った参道に対して正対するように社殿を建てたら古墳とズレちゃった、というのが正解なのかな、と考えなおしたりする今の私である。
古墳の北側に立っている鳥居も古墳のセンターとズレているのが、これで説明できるのかもしれません。
最後にやっとこさ役に立つ情報
そんなわけで、府中熊野神社古墳について勝手なことをいろいろ書いてきたのであるが、最後にくらいちょっと役に立つ情報を。
この古墳と神社、初めに書いた通り、ちょっと行きにくいのが問題で、かつ駐車場がないのもわたくし的にはなかなか行けなかった理由の一つなのだが、古墳の北側100m程の所にある府中西府町郵便局の辺りにコインパーキングがありました。(2020年3月現在)
なかなか素敵な古墳ですので、是非皆さん奮ってお出かけください!