先週末、別府へ旅した。
いつか、家族を連れていきたいと思っていたところだ。
いつか連れていきたい、と思っていたけれど、じゃあいつ行く、という当てもなかったのだけど、Go to トラベルが始まって、「ああ、それじゃあ行こうか」と思い立った。
別府と言ったら、血の池地獄やら竜巻地獄やら地獄が有名だし、何といっても温泉宿に泊まれるし、観光に最適の街だ。
それで、家族には「別府はいいぞー、地獄があるぞ、温泉の蒸気でプリンを作ってるぞ、泥の温泉もあるぞ、ラクテンチもあるぞ!」と観光メインの話をしていたのだけど、実はもう一つ、家族を連れていきたいところがあって、それが「旧陸軍病院の跡地」だった。
今では病院はなくなって、駐車場になっているのだけど、そこに昔をしのばせる門柱が一つ立っている。
ただそれだけだ。
昨年の3月、102歳になったばかりの祖父を連れて僕はそこを訪ねた。
「ほうか、ここか」
と祖父は言ったっだけだったけれど、祖父は戦争中マニラで負傷をして、マニラ、台北の病院を経て、この別府の陸軍病院へ運ばれてきた。怪我で身動きも取れず、いい思い出があるわけでも無いようだが、それでも無事に故郷へ帰るまでの思い出の地なのだった。
3月にここを一緒に訪ねたのに、その後1か月半ほどで、祖父は急に他界してしまい、僕にとってはそういう意味でも祖父との思い出の地になった。
前回は一緒にこれなかった妻と子供を、そこへ連れて行きたかったのだ。
ただ、それだけだ。
僕のの両親でさえ戦後の生まれだ。その僕の子供たちに、門柱一本であってもこの場所を見せたかった。
去年、訪ねた後、いろいろ調べていたら、この病院の古い絵ハガキをネットの古書店で見つけ、購入した。今もあるなだらかな坂の上に、確かに門柱が立っていた。
病院の跡地から山手の方を見ると、「ラクテンチ」という遊園地がある。
地元密着的な小さな遊園地で、2輪の輪っかでできた変わった観覧車がある。
前回別府を訪ねた時、この観覧車が気になって、祖父が宿で昼寝をしている間に乗りに行ったのだ。
それを聞いていた小学生の娘にとっては今回の旅はむしろラクテンチを訪ねる旅だったようだが、それでも良い。なにか、心に残ってくれたら嬉しいなと思う。