第３回東海道徒歩の旅 大森海岸を立つ
時は2011年4月30日。
第１回東海道徒歩の旅に出てから、もう１年が経ってしまった。
歩いた回数は２回。ここまでに進んだ距離は約14km。
歩いた回数は、まあそんなもんかな、と思うところだが、距離は思ったほど進んでいない。江戸時代の旅人のように１日40km進めば、２日で80km、もう小田原あたりにいてもいいわけだが、まあしかし、いいではないか。俺たちは確かに進んでいる。そして、急ぐ旅でもない。あわてず行こうではないか。
というか、江戸時代の人たち速すぎないか。二日歩いたら小田原か？
ちょっと気になって読み返してみたが、「東海道中膝栗毛」の弥二さん喜多さんも一泊目は戸塚、二泊目は小田原だから、やはりそれが標準的な速さのようだ。
とにもかくにも、我々は京急で前回の終着地点、大森海岸駅へ向かった。
我々とは言っても、今回は俺とゴンちゃんの二人旅だ。せっかく、前回、名前を付けてあげたというのに、妻のお多津はご懐妊で今回は不参加なのである。
「おう、ゴンちゃんよ。今日も元気に歩こうではないか」
大森海岸のホームに降り立ち、旅の友に本日の意気込みを語りかけると、ゴンちゃんはベビーカーに乗ったまま寝ていた。
そうか、寝たか。
そんなこともあろうかと思って、ベビーカーを押してきたのである。
さすらいの東海道の旅を目指す気持ちからすると、ベビーカーをガラガラ押しての東海道の旅はちょっとハードボイルドさに欠けるのだけど、しかし、重たい子供を抱きかかえて汗をだらだら流しながら歩くのだってハードボイルドさは欠けるわけで、ここは楽をしよう、楽を。
そうやって、眠った子供を乗せたベビーカーを押してガラガラ行くと、道の反対側に磐井神社があった。東海道徒歩の旅専用の御朱印帳を作ったので、ここはぜひとも御朱印を頂きたい。
しかし、神社は道の反対側だ。どうしようか迷ったが、来た道を少し戻って横断歩道を渡り、反対側にある神社へ向かった。やはりベビーカーがあってよかった。
磐井神社東海道５３公園
磐井神社に参拝して、また道を進むとそれまで片側４車線の大通りだった東海道は、脇に旧道が残っており、それは美浜通りという通りだった。
丁度その旧道へ入ったところでゴンちゃんが目を覚ました。
そして、その途端、
「公園どこかなあ。遊びたいなあ」
と言うのであった。やはり、子供というのは公園が好きなんだなあ。
思えば、第１回の時は「芝公園」増上寺の境内で砂利遊びをし、前回は鈴ヶ森手前の「しながわ区民公園」だった。今回もどっか公園あるかなあ、なんて思いつつ歩いていると、すぐ旧道わきに「大田区立大森仲町児童公園」という小さな公園があった。
こんな小さな公園でも、彼には十分なのである。
彼は公園へ走り出し、ブランコなど乗り、そのうちお腹がすいたと持参のドーナツなど食べてご満悦だ。
俺はその様子を見ながら、この調子じゃ東海道53公園になりそうだなあ、などと思っていたのである。
そこから数百メートルは旧道の気配が残っていたが、道はまた第一京浜の大通りに合流し、なんとなく代わり映えのしない車だらけの通りになった。
しばらく行くと「梅屋敷」跡の広場のような空き地が道の反対側に見え、ゴンちゃんも
「公園かもしれないよ」
と行きたそうな気配でいうので、じゃあ、寄ってみようか、と行ってみたのだが、その広場は浮世絵の題材にもなった有名な梅屋敷の跡とはいえ、いまではどうも疲れた感じのおじさんがボーっとしてたり、空き缶をつぶしているおじさんがいたりして、ゴンちゃんも「あれ何か変だな」と察したらしく遊ぶ気にならず、そのまま出発することになった。
道はまた車だらけの第一京浜で、耐えるように進んだ。
ゴンちゃんも「公園は？公園は？」の連続だ。
「もうすぐ大きい川があるから、公園もあるかもよ」
答えるこっちもちょっと辛くなってきた。なんせ、ただの道なのだ。
そのうち、六郷神社に出た。思いのほか立派な神社で驚いた。
六郷神社
磐井神社、六郷神社の御朱印ここまでくるとその先は多摩川だ。
広々とした河原とそこにかかる橋を見るとゴンちゃんは少しやる気を出し、久しぶりにベビーカーを降りて歩き始めた。
東海道の雑学的には、多摩川を渡ったところにあるお茶屋が奈良茶漬けで有名だったはずだが、それも昔の話で気配もなし。
河原に公園があるかもよ、あったら遊ぼうね、なんて約束をしていたので、公園はなかったけれども土手で電車ごっこをすることになり、疲れた体に鞭を打たれる私なのであった。
そんなわけで、川崎へ入り、本日の旅はここまでなのでした。
川崎宿に入る（つづく）
本日の歩行距離：約7.5ｋｍ
歩行時間：３時間40分
